精神科に転職や異動をするとき、「急性期と慢性期、どちらの病棟になるのだろう」と気になる人は多いと思います。同じ精神科でも、病棟によって、雰囲気も仕事の流れも、大きく違います。配属される病棟で、毎日の働き方が変わるといっても言い過ぎではありません。
私は精神科看護師として、20年働いています。精神科では、救急・急性期から慢性期まで、いくつもの病棟を経験してきました。病棟を移るたびに、同じ精神科なのに、こんなに違うのかと感じてきました。
この記事では、急性期と慢性期の病棟の違いを、私の経験をもとにまとめます。それぞれの雰囲気、仕事、一日の流れ、向いている人まで紹介します。自分に合う病棟を考えるときの、参考にしてください。
- 急性期と慢性期の違いが分からない
- どちらの病棟が自分に合うか知りたい
- 病棟ごとの一日の流れを知りたい
- 転職先で、どの病棟になるか不安
急性期と慢性期って、そんなに違うのかな。
雰囲気も仕事も、かなり違います。両方で働いてきた経験から、紹介しますね。
精神科の病棟の種類

まずは、精神科の病棟の種類を、ざっくり整理します。病棟の名前や役割は、病院によって違います。ここでは、私の経験と、病院の公式な案内をもとに、大まかな違いを紹介します。あくまで目安として読んでください。実際の内容は、働きたい病院の案内で確かめましょう。名前が同じでも、中身が違うこともあります。
救急・急性期の病棟
症状が強くなった方に、集中的な治療を行う病棟です。
病院によっては、入院期間の目安を決めています。たとえば、国立病院機構さいがた医療センターの精神科急性期治療の案内では、3か月が入院期間の目安とされています。
慢性期の病棟
長い期間、治療や療養が必要な方が過ごす病棟です。
症状の治療に加えて、生活の力を保ち、高めることに力を入れます。
その間の病棟
急性期と慢性期の間のような病棟もあります。私の印象では、急性期と慢性期のミックスです。
- 急性期の病棟の後に、もう少し治療が必要な方
- 慢性期の病棟で症状が悪くなり、そこでは十分な治療が難しい方
こうした方が過ごす、橋渡しのような病棟というイメージです。
急性期の病棟の特徴

ここからは、私が働いてきた中で感じた、急性期の病棟の特徴を紹介します。急性期の病棟は、入院したばかりの方や、症状が強い時期の方が多い場所です。そのため、精神科の中でも、動きが多く、気が抜けない病棟だと感じています。特に大きな特徴を、3つ紹介します。慌ただしい中でも、一人ひとりに丁寧に向き合うことが求められます。
緊張感のある慌ただしい雰囲気
急性期の病棟は、入院や退院への対応が多く、緊張感があります。
病棟全体が、慌ただしい雰囲気です。変化の多い毎日になります。
安全管理と観察が中心
症状が強い時期の方が多いため、安全を守ることが大切です。
- 患者さんの様子の観察
- 病棟の環境を整える
- 危険が起きないかを見立てる(リスクアセスメント)
- お薬の管理と確認
- バイタルサイン(体温や血圧など)の測定
どれも、患者さんの安全につながる大事な仕事です。
信頼関係を築き訴えを聴く
急性期では、患者さんとの信頼関係を築くことも、大切な仕事のひとつになります。
不安や訴えに耳を傾け、多職種のカンファレンスで、支え方を話し合います。聴くことから、治療が始まると感じています。
慢性期の病棟の特徴

次に、慢性期の病棟の特徴を紹介します。慢性期の病棟は、長く入院している方が、生活を送っている場所でもあります。急性期とは、雰囲気も、看護で大切にすることも違います。生活を支える看護が、中心になります。私が感じた特徴を、3つ紹介します。急性期とは時間の流れ方が違うので、働く側の心持ちも変わります。
生活感のあるゆっくりした雰囲気
慢性期の病棟には、生活感があります。
決まった流れ(ルーティン)を大切にしながら、ゆっくりとした雰囲気の中で過ごします。
生活の力を保ち高める
慢性期の看護では、日常生活の動作(ADL)や、生活の技能を保ち、高めることを目指します。
- 日常生活の動作の維持と向上
- 生活の技能の練習
- リハビリテーション
- 陰性症状への対応
陰性症状とは、意欲が出にくい、感情が表に出にくいといった症状のことをいいます。その人のペースに合わせて、関わっていきます。
自分でできることを増やす
慢性期の看護で大切にしているのは、患者さんが自分でできることを、増やしていくことです。
手伝いすぎず、できることを一緒に見つけます。小さな一歩を、積み重ねていく看護です。
病棟ごとの一日の流れ

病棟によって、一日の流れにも違いがあります。ここでは、日勤の一日の流れを、ざっくり紹介します。基本の流れは、急性期も慢性期も、大きくは変わりません。違うのは、そこに加わる仕事です。病院によっても違うので、目安として読んでください。転職先の一日をイメージするのに、役立ててください。
基本の一日の流れ
私が働いてきた病棟では、日勤の基本の流れは、次のようなものでした。
- 午前:バイタルサイン測定、日常生活への援助、作業療法
- 昼:昼食
- 午後:バイタルサイン測定、日常生活への援助、作業療法、カンファレンス
この流れが、どの病棟にも共通する土台です。
急性期で加わる仕事
急性期の病棟では、基本の流れに加えて、次のような仕事が入ります。
- 入院の受け入れ
- 退院に向けた支援
- 検査への対応
予定外の入院もあるため、その日の動きが変わりやすいのが特徴です。
慢性期で加わる仕事
慢性期の病棟では、基本の流れに加えて、外出や外泊への支援が入ります。
病院の外での生活に、少しずつ慣れていくための支援です。生活の場を広げる手伝いをします。
病棟ごとに向いている人

急性期と慢性期では、求められる力が少し違います。ここでは、私が見てきた中で、それぞれの病棟に向いていると思う人の特徴を紹介します。あくまで私の考えです。当てはまらなくても、働きながら身につく力もあります。自分のタイプを考えるヒントにしてください。迷ったときは、自分がどんな場面で力を出しやすいかを思い出してみましょう。
急性期に向いている人
急性期の病棟に向いているのは、次のような人だと思います。
- 判断力・決断力がある人
- 観察力・危機管理能力が高い人
- オンとオフの切り替えが上手な人
- チームワークができる人
- 変化や動きのある環境が好きな人
変化の多い病棟なので、すばやく判断して動ける人が力を発揮しやすいです。
慢性期に向いている人
慢性期の病棟に向いているのは、次のような人だと思います。
- 傾聴力があり、根気強く関われる人
- 小さな変化や、その人の強みに気づける人
- 生活援助やリハビリに関心がある人
- 包容力があり、温かい人間関係を築ける人
- 落ち着いたペースで仕事を進めたい人
長く関わる病棟なので、じっくり向き合える人が力を発揮しやすいです。
自分のペースを知ることが大切
どちらが良い悪いではありません。大切なのは、自分がどんなペースで働きたいかを知ることです。
精神科そのものの向き・不向きは、精神科はきつい?20年働いて分かった向いている人にまとめています。あわせて読むと、自分に合う働き方が見えてきます。
病棟を移って感じたこと

私は、精神科の中で、いくつもの病棟を移ってきました。そのたびに、新しい病棟の流れに慣れるまで、時間がかかりました。ここでは、病棟を移って感じたことを、正直にお伝えします。これから病棟を移る人や、転職を考えている人の参考になればうれしいです。戸惑ったことも含めて、ありのままに書きます。
病棟の流れに合わせる難しさ
病棟を移ったとき、いちばん難しかったのは、その病棟の流れに合わせることでした。
同じ精神科でも、病棟ごとに、仕事の進め方や時間の使い方が違います。慣れるまでは、戸惑って当然だと思います。
急性期から慢性期への戸惑い
私は、急性期が自分の性に合っていました。そのため、慢性期の病棟に移ったときは、ゆっくりなペースに戸惑いました。
急性期の速さに慣れていると、ゆっくり関わることが、かえって難しく感じることもあるのです。
自分に合う病棟を知る大切さ
いくつもの病棟を経験して、自分にはどんなペースが合うのかが、分かるようになりました。
合う病棟で働けると、力を発揮しやすくなります。転職や異動のときは、病棟の特徴も、確かめてみてください。
転職前に病棟を確かめる方法

精神科への転職を考えているなら、どの病棟で働くのかを、事前に確かめておくことが大切です。同じ病院でも、病棟によって、働き方は大きく変わります。ここでは、転職前に確かめておきたいことを、3つ紹介します。見学や面接のときに、ぜひ聞いてみてください。入職してからのずれを、減らすことにつながります。
病棟の種類と役割を聞く
配属される予定の病棟が、急性期なのか、慢性期なのか、その間の病棟なのかを聞いてみましょう。
病棟の役割が分かると、働くイメージがしやすくなります。
一日の流れと夜勤を聞く
一日の流れや、入院の受け入れの頻度、夜勤の体制も、確かめておきたい点です。
夜勤の条件の見方は、夜勤がきつい人が転職前に確認したい4つのポイントにまとめています。条件の確認に役立ててください。
見学で雰囲気を感じる
見学のときは、病棟の雰囲気や、働いている人の様子を見てみましょう。
見るポイントは、人間関係に疲れたら|次の職場で見る3つのポイントにまとめています。肌で感じる雰囲気が、判断の大きな材料になります。
病棟の違いのよくある質問

ここでは、精神科の病棟の違いについて、よく聞かれる質問にお答えします。病院や病棟によって、状況は変わります。あくまで、私の経験と考えとして、参考にしてください。気になることは、見学や面接で、直接確かめてみましょう。疑問が解けるだけでも、判断がしやすくなります。
急性期と慢性期はどちらがきついですか?
きつさの種類が違います。急性期は、変化が多く、緊張感があります。慢性期は、根気強く関わる力が求められます。自分に合うペースで考えるのがよいと思います。
亜急性期とはどんな病棟ですか?
私の印象では、急性期と慢性期のミックスのような病棟です。急性期の後にもう少し治療が必要な方や、慢性期で症状が悪くなった方が過ごす、橋渡しの病棟というイメージです。
病棟は自分で選べますか?
病院によって違います。希望を聞いてくれる病院もあるので、面接で伝えてみましょう。希望を伝えることは、悪いことではありません。
合わない病棟に配属されたらどうしますか?
慣れるまで戸惑うのは、自然なことです。私も、ゆっくりなペースに戸惑いました。それでも合わないと感じたら、異動の相談を考えてみてください。
精神科の経験がなくても急性期で働けますか?
病院の教育体制によって違います。面接や見学で、新しく来た人への教え方を確かめておくと安心です。教育体制の確認が大切です。
まとめ

同じ精神科でも、急性期と慢性期では、雰囲気も仕事も大きく違います。急性期は、緊張感があり、安全管理と信頼関係づくりが中心です。慢性期は、生活感があり、生活の力を保ち、自分でできることを増やす看護が中心です。自分がどんなペースで働きたいかを考えて、合う病棟を選んでみてください。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 急性期は、緊張感があり、変化の多い病棟
- 慢性期は、生活感があり、ゆっくりした病棟
- 一日の基本の流れは同じ。加わる仕事が違う
- 急性期は判断力、慢性期は根気強さが活きる
- 転職前に、病棟の種類と雰囲気を確かめる
まずは、自分が「速いペース」と「ゆっくりしたペース」のどちらで力を出しやすいかを、考えてみてください。それが、自分に合う病棟を選ぶ軸になります。

