職場で、誰かが不機嫌そうにしている。理由は分からないのに、「私が何かしたかな」と気になって、仕事に集中できない。家に帰るころには、どっと疲れている。そんな経験はありませんか。
私は精神科看護師として、20年働いています。私自身も、理由は分からないまま、相手の表情や雰囲気から不機嫌な様子を感じ取って、気になったことがあります。人の顔色に気づきやすい人ほど、疲れやすいものだと感じます。
この記事では、人の顔色を伺いすぎて疲れたときの考え方と、気持ちを楽にする方法をまとめます。顔色に気づけるのは、思いやりがあるからです。その力を、自分を苦しめるものにしないためのヒントを、お伝えします。
- 人の不機嫌が、自分のせいに思えてしまう
- 職場の空気が気になって、疲れる
- 言いたいことを、つい飲み込んでしまう
- 顔色を伺う自分を、変えたい
あの人が不機嫌なのは、私のせいかな。
あなたのせいとは限りません。「何かあったのかな」と考えてみましょう。
人の顔色を伺いすぎて疲れる理由

人の顔色を伺うと、なぜこんなに疲れるのでしょうか。ここでは、私自身の経験と、よくいわれている理由をあわせて紹介します。ここでお伝えするのは、診断や病気の判断ではありません。疲れる仕組みを知るだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。順番に見ていきましょう。当てはまる点があれば、「自分だけではない」と思ってもらえたらうれしいです。
理由の分からない不機嫌に気づいてしまう
私も、理由は分からないのに、相手の表情や雰囲気から、不機嫌な様子を感じ取ったことがあります。
気づいてしまうと、頭から離れません。気づく力があるからこそ、疲れてしまうのだと思います。
自分のせいかもと考えてしまう
相手が不機嫌だと、「私が何かしたのかな」と考えてしまう人は多いといわれています。
- さっきの言い方が悪かったかな
- 仕事が遅かったかな
- 嫌われたかな
理由が分からないほど、自分を責める方向に考えが向きやすくなります。
気を張る時間が長くなる
顔色を伺っている間は、ずっと気を張っている状態です。
その時間が長くなると、心にも体にも負担がかかります。疲れるのは、当たり前のことなのです。
顔色を伺う人がやりがちなこと

人の顔色を伺いすぎるとき、つい、やってしまいがちな行動があります。どれも、相手を思う気持ちから生まれるものです。ただ、続けていると、自分がすり減ってしまいます。ここでは、よくいわれる3つを紹介します。当てはまるものがないか、確認してみてください。責めるためではなく、気づくためのチェックとして読んでください。
相手の機嫌を自分で直そうとする
相手が不機嫌だと、なんとか機嫌を直そうとして、必要以上に気を回してしまうことがあります。
しかし、相手の機嫌は、こちらが直せるものとは限りません。
言いたいことを飲み込む
相手の顔色を見て、言いたいことを、つい飲み込んでしまう。そんなことはありませんか。
小さな我慢でも、積み重なると、心の負担になります。
頼まれると断れない
相手の機嫌を損ねたくなくて、頼まれごとを断れないこともあります。
- 本当は忙しいのに、引き受けてしまう
- 無理をして、あとで自分が苦しくなる
断れないことが続くと、自分の時間がどんどん減っていきます。
精神科看護師が考える顔色の見方

精神科の現場で働いてきて、私が大切にしている考え方があります。それは、行動だけを見て、その人の性格だと決めつけないことです。不機嫌そうに見える人にも、その背景には、さまざまな事情があるかもしれません。見方を少し変えるだけで、顔色を伺う疲れは軽くなります。相手を責めるのでも、自分を責めるのでもない、もうひとつの見方です。
不機嫌は性格ではなく状態
イライラしている人を見ても、「性格が悪い」とは考えません。その下に、不安や焦り、疲れなどがあるのかもしれない、と考えます。
不機嫌は、その人の性格ではなく、そのときの状態だと、私は見ています。
「何かあったのかな」と考える
不機嫌な人を見たとき、私はまず、「何かあったのかな?」と考えます。
そう考えると、自分のせいだと思い込まずに済みます。相手の事情に目を向けるだけで、気持ちが落ち着きます。
相手の機嫌は相手のもの
相手の機嫌は、その人自身のものです。自分がすべてを引き受ける必要はありません。
思いやりを持ちつつも、自分と相手の間に線を引くことが、自分を守ることにつながります。
顔色に気づける力は長所

人の顔色を伺うことは、悪いことばかりではありません。顔色に気づけるのは、相手をよく見ている証拠です。上手に使えば、職場でも、人を支える大きな力になります。ここでは、私が感じている、顔色に気づける力の良い面を、3つ紹介します。気にしすぎてしまう自分を、少し違う角度から見てみましょう。短所に見えていたものが、実は強みだったと気づけるかもしれません。
余計なストレスを避けられる
相手の様子に気づけると、ぶつかる場面を、先に避けることができます。
その結果、余計なストレスがかかりにくくなると感じます。
円滑なコミュニケーションにつながる
空気を読めると、周りとのやりとりが、スムーズになります。
相手の状態に合わせて、話すタイミングや言い方を変えられるからです。空気を読む力は、職場で役立つ力です。
気づく力は人を支える力
いつもと違う変化に気づける人は、しんどそうな人に、声をかけることもできます。
声のかけ方については、しんどそうな人への声のかけ方の記事にまとめました。気づく力は、誰かの支えにもなります。
気にしすぎを和らげる方法

顔色に気づける力は長所です。ただ、気にしすぎて、心と体に負担がかかっているなら、少し休ませてあげることも大切です。ここでは、私が実際にやっている工夫と、一般的にいわれている方法を、あわせて紹介します。できそうなものを、ひとつだけ試してみてください。合わなければ、無理に続ける必要はありません。
深追いせず時が経つのを待つ
私は、不機嫌な人がいても、深追いはしません。時が経つのを待ちます。
無理に理由を探ったり、機嫌を直そうとしたりしないことで、自分の負担も軽くなります。
顔色を伺わなくていい時間をつくる
短い時間でもいいので、人の顔色を伺わなくていい、静かなプライベートの空間を確保してみましょう。
- ひとりで過ごす時間
- 好きなことに集中する時間
- 静かに休める場所
気を張らない時間が、心の回復につながります。気持ちの切り替え方については、仕事の嫌なことを家まで引きずる時の切り替え方も参考にしてください。
小さく自分の気持ちを伝える
一般的に、いきなり強く主張するより、小さなことから自分の気持ちを伝える練習が勧められています。
たとえば、「今ちょっと手が離せないので、あとでもいいですか」と伝えるくらいからです。小さな一言から、始めてみましょう。
つらさが続く時の相談先

工夫をしても、つらさが続くことがあります。そんなときは、ひとりで抱え込まず、相談することが大切です。相談することは、弱さではありません。早めに相談することで、楽になることもあります。ここでは、相談先の考え方を、3つに分けて紹介します。迷ったときの目安にしてください。
職場の中の相談先
職場の中には、相談できる場所があるかもしれません。
- 信頼できる上司や先輩
- 人事や、社内の相談窓口
- 産業医
話しやすい相手から、ひとつずつ当たってみてください。
職場の外の相談窓口
職場の中で話しにくいときは、職場の外の窓口もあります。厚生労働省のこころの耳は、働く人向けの相談窓口です。匿名・無料で相談できます。
誰かに話すだけでも、気持ちが整理されることがあります。
医療機関に相談する目安
落ち込みや不安が続く、眠れない、仕事や生活に支障が出ている。そんなときは、心療内科や精神科などの医療機関に相談することも、考えてみてください。
命に関わる危険を感じたときは、迷わず110番・119番、または医療機関に連絡してください。
顔色を伺うことのよくある質問

ここでは、人の顔色を伺うことについて、よく聞かれる質問にお答えします。個別の事情によって、適した考え方は変わります。あくまで一般的な考え方として、参考にしてください。つらさが強いときや、続くときは、専門の窓口や医療機関に相談することも、考えましょう。疑問が解けるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
人の顔色を伺ってしまうのは病気ですか?
このブログでは、診断はできません。顔色に気づきやすいこと自体は、思いやりの表れでもあります。ただ、つらさが続く、生活に支障が出ているときは、医療機関に相談してください。
顔色を伺うのはやめたほうがいいですか?
無理にやめる必要はないと、私は考えています。気づける力は、長所でもあります。ただ、負担が大きいときは、顔色を伺わなくていい時間をつくりましょう。
職場の不機嫌な人にはどう接すればいいですか?
私は、「何かあったのかな」と状態として見て、深追いせず、時が経つのを待ちます。自分のせいと決めつけないことが、大切です。
子どもの頃の環境が原因ですか?
原因は、人によって違い、一概には言えません。原因探しより、今の自分を楽にする方法に目を向けることを、おすすめします。
職場の人間関係そのものがつらい時はどうしますか?
環境を変えることも、選択肢のひとつです。看護師向けですが、人間関係に疲れた時の職場選びの記事に、考え方をまとめました。ひとりで抱え込まないようにしましょう。
まとめ

人の顔色に気づけるのは、思いやりがあるからです。ただ、気にしすぎて、心と体に負担がかかっているなら、少し休ませてあげることが大切です。不機嫌は、性格ではなく状態かもしれません。「何かあったのかな」と考えて、深追いせず、待ってみましょう。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 顔色に気づけるのは、思いやりがあるから
- 不機嫌は性格ではなく、そのときの状態
- 「何かあったのかな」と考え、深追いしない
- 顔色を伺わなくていい時間をつくる
- つらさが続くときは、窓口に相談する
まずは今日、5分だけでも、誰の顔色も気にしなくていい時間をつくってみてください。その時間が、あなたの「ひといき」になります。

