仕事で嫌なことがあった日は、家に帰っても、頭から離れない。お風呂に入っても、ご飯を食べても、気づくと同じことを考えている。そんな経験はありませんか。
私は精神科看護師として、20年働いています。そんな私も、仕事の嫌なことを、家まで引きずった経験があります。そのときは、意識が向かず、人の話が入ってこない状態でした。「どうすれば切り替えられるのか」と悩んだ時期も、あります。
この記事では、引きずるときの変化と、私が実際にやってきた切り替え方、そして逆効果だった方法をまとめます。引きずるのは、おかしなことではありません。読み終えるころには、少し気持ちが軽くなるはずです。
- 家に帰っても、仕事の嫌なことが頭から離れない
- 人の話が入ってこない
- 夜、考え込んで眠れない
- 気持ちの切り替えが苦手
また嫌なことを思い出してしまった。
引きずるのは、自然なことです。無理に消そうとせず、少しずつ切り替えていきましょう。
引きずる時に起きる心と体の変化

嫌なことを引きずっているとき、心と体には、いつもと違う変化が出ます。私自身が経験したことを、順番に紹介します。ここでお伝えするのは、診断や病気の判断ではありません。あくまで、私が感じた変化です。当てはまる点があれば、「自分だけではない」と思ってもらえたらうれしいです。次の章では、周りの人に出るサインも、あわせて紹介します。
意識が向かず集中できない
引きずっているとき、いろいろなことに意識が向きませんでした。
目の前のことをしているのに、頭の中は別のことを考えている。だから、集中できないのです。
人の話が入ってこない
人が話しかけてくれても、内容が頭に入ってきません。聞いているつもりでも、あとで思い出せないことがあります。
- 話の内容が、頭に残らない
- 聞き返すことが増える
こうした状態は、心に余裕がないときに出やすいと感じます。
体が重くなる
心の疲れは、体にも出ます。私の場合は、体が重くなりました。
動くのがおっくうになり、体まで疲れている感覚になります。気持ちの問題だけではないと、実感した変化です。
引きずっている人に見られるサイン

引きずっているのは、自分だけとは限りません。周りの人にも、同じような様子が出ることがあります。精神科の現場で、そして職場で見てきたサインを、3つ紹介します。いつもと違う変化に気づけると、自分や身近な人を、早めに気づかえます。声のかけ方については、しんどそうな人への声のかけ方の記事も、あわせてご覧ください。どれも、特別な知識がなくても、普段の様子を知っていれば気づける変化です。
声が普段より小さくなる
声の大きさや張りは、気持ちが出やすい部分です。
普段より声が小さくなっているときは、元気がないサインのひとつです。
想定外の音に敏感になる
余裕がないときは、ちょっとした音にも、敏感に反応します。
- ドアの音に、びくっとする
- 急に話しかけられると、驚く
想定していなかった刺激に、過敏になるのも、特徴だと感じます。
反応が遅れて小さなミスが増える
呼びかけへの反応が、普段より遅くなります。小さなミスも、増えます。
これは、頭の中が別のことでいっぱいで、注意が向きにくいためだと私は考えています。責めずに、様子を見守りましょう。
引きずるのは心のエネルギー不足

私は、引きずることについて、ひとつの考えを持っています。生きている以上、ストレスをゼロにすることはできません。だから、引きずるのは当たり前です。そして、引きずっているときは、心のエネルギーが不足している状態だと、私は考えています。これは医学的な説明ではなく、現場で感じてきた、私なりの見方です。順番に、理由とあわせて見ていきましょう。
ストレスをゼロにはできない
ストレス社会で生きている以上、嫌なことは、必ず起こります。
だからこそ、ゼロにしようとせず、うまく付き合うことを考えるほうが、現実的です。
引きずることは当たり前
引きずる自分を、責めないでください。
真剣に仕事に向き合っている人ほど、嫌なことが心に残ります。引きずるのは、悪いことではありません。
エネルギーを回復する視点を持つ
心のエネルギーが足りないなら、回復させることを考えます。
- 体を動かす
- 温まってゆっくりする
- 誰かに話を聞いてもらう
次の章で、私が実際にやってきた方法を紹介します。エネルギーを補うという視点が、ポイントです。
気持ちを切り替える方法3つ

ここからは、私が実際にやってきた切り替え方を、3つ紹介します。どれも、特別な道具やお金がいらない方法です。ただし、合う方法は、人によって違います。できそうなものを、ひとつだけ試してみてください。合わなければ、無理に続ける必要はありません。どれも、私の経験にもとづく、実感のある方法です。
歩く・体を動かす
私は、ウォーキングや、趣味のスポーツで、体を動かしています。
体を動かしている間は、考え込む時間が、自然と減ります。頭を空にする時間になるのです。
湯船や温泉でゆっくり温まる
私は、温泉に入って、体を温めるようにしています。ただ、普段は、シャワーだけで済ませていて、湯船にはつかりません。最近は、私と同じような人も多いと感じます。
厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイドの解説では、就寝の1〜2時間前に入浴して体を温めると、入眠しやすいとされています。ぬるめの湯にゆっくりつかると、リラックスも期待できるという解説もあります。疲れた日は、湯船につかる日を少しだけつくってみてはどうでしょうか。
- ぬるめの湯(目安は38〜40℃)にゆっくりつかる
- 就寝の直前は避け、1〜2時間前に入る
- 熱すぎる湯や、お酒を飲んだあとの入浴は避ける
湯船が苦手な人は、シャワーでも構いません。温まる時間を持つこと自体を、無理なく続けることが大切です。
話を聞いてもらう
愚痴を聞いてくれる人に、話します。話すだけで、気持ちが軽くなることがあります。
話す人がいないときは、AIに話すこともあります。ただし、AIは、人や専門の窓口の代わりにはなりません。つらさが続くときは、人や専門の窓口に、頼ってください。
逆効果になりやすい切り替え方

切り替えたい一心で、逆効果になる方法を選んでしまうことがあります。私自身も、やってみて「これは違った」と感じた方法が、いくつかあります。同じ失敗を避けてもらえるよう、正直にお伝えします。合わなかった理由も、あわせて書きます。「切り替えたい」という気持ちが強いときほど、選ぶ方法には注意が必要です。
ギャンブルで紛らわせる
ギャンブルは、勝てば気分が上がります。しかし、負ければ、余計に沈みます。
気持ちが不安定なときに、結果に気分を左右されるのは、リスクが大きいと感じます。
ドライブで気分転換する
ドライブは、一見よさそうに思えます。ただ、気持ちが沈んでいるときは、周囲への意識が低くなっています。そのため、運転は危ないと感じます。
- 周りへの注意が、散りやすい
- 小さな空間で、余計に考え込んでしまう
気分転換のつもりが、かえって危険になることがあります。
眠れないまま寝ようとする
私は、電気を暗くして、横になって寝ようとしたことがあります。しかし、1時間たっても、2時間たっても、眠れませんでした。悪かった出来事が、何度も思い出されます。悪循環でした。
20代のころは毎日お酒を飲んでいましたが、今はほとんど飲みません。眠れずに、お酒の力で強制的に寝たこともあります。ただ、厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイドでは、眠るための飲酒(寝酒)は、睡眠の質を悪くする可能性があるとされています。寝酒は、おすすめできません。
眠れない夜にできること
ここからは、私の経験ではなく、一般的に勧められている方法を紹介します。眠れない夜に、無理に寝ようとするのは、逆効果になりやすいといわれています。
- 眠れないときは、いったん寝床を離れ、薄暗い部屋で静かに過ごす
- 眠気が来てから、寝床に戻る
- 寝床でスマホを見続けたり、何度も時計を確認したりしない
- 寝酒に頼らない
厚生労働省の睡眠ガイドでは、寝室にスマホを持ち込まず、暗くして寝ることも勧められています。ただし、眠れない日が続く、日中の眠気が強いといった場合は、医療機関や相談窓口に相談してください。
眠れない夜の過ごし方は、仕事の考え事で眠れない夜の過ごし方の記事で、詳しくまとめています。
つらさが続く時の相談先

切り替えようとしても、つらさが続くことがあります。そんなときは、ひとりで抱え込まず、相談することが大切です。相談は、弱さではありません。早めに相談することで、楽になることもあります。ここでは、相談先の考え方を、3つに分けて紹介します。ひとりで抱え込まないための、大事なポイントです。
職場の中の相談先
職場の中には、相談できる場所があるかもしれません。
- 上司や、信頼できる先輩
- 人事や、社内の相談窓口
- 産業医
話しやすい相手から、ひとつずつ当たってみてください。
職場の外の相談窓口
職場の中で話しにくいときは、職場の外の窓口もあります。厚生労働省のこころの耳は、働く人向けの相談窓口です。匿名・無料で、電話、SNS、メールで相談できます。
命に関わる危険を感じたときは、迷わず110番・119番、または医療機関に連絡してください。
職場を変える選択肢も知っておく
原因が、職場の人間関係にあるなら、環境を変えるという選択肢もあります。
辞める前に確認したいことは、人間関係に疲れた看護師の職場選びの記事にまとめました。看護師以外の方にも、考え方の参考になる部分があります。選択肢のひとつとして、読んでみてください。
切り替えに関するよくある質問

ここでは、引きずることや、切り替え方について、よく聞かれる質問にお答えします。個別の事情によって、適した対応は変わります。あくまで一般的な考え方として、参考にしてください。つらさが強いときや、続くときは、専門の窓口や医療機関に相談することも、考えましょう。疑問が解けるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
引きずるのは性格の問題ですか?
性格だけで決まるものではないと、私は考えています。疲れていたり、余裕がなかったりするときは、誰でも引きずりやすくなります。自分を責めないことが、大切です。
休みの日も引きずってしまう時はどうしますか?
休みの日こそ、体を動かしたり、温泉に行ったりと、頭から離れる時間をつくってみましょう。それでも続くなら、話を聞いてもらうことをおすすめします。
愚痴を話せる人がいない時はどうしますか?
身近に話せる人がいないときは、AIに話してみたり、紙に書き出してみたりする方法もあります。ただし、つらさが続くなら、職場の外の窓口も検討してください。
寝る前に思い出してしまう時はどうしますか?
私の経験では、無理に寝ようとすると、かえって考え込んでしまいました。一般的には、いったん寝床を離れて、眠気が来てから戻る方法が紹介されています。寝酒は、睡眠の質を悪くする可能性があります。眠れない日が続くなら、医療機関や相談窓口に相談してください。
どのくらい続いたら相談したほうがいいですか?
一概に決められません。一般的には、眠れない、食べられない、仕事や生活に支障が出る状態が続くときは、早めの相談が勧められています。迷ったら、早めに相談してみてください。
まとめ

仕事の嫌なことを引きずるのは、当たり前のことです。引きずっているときは、心のエネルギーが不足している状態だと、私は考えています。歩く、温まる、話を聞いてもらう。できそうなことから、ひとつ試してみてください。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 引きずるのは当たり前。自分を責めない
- 引きずるときは、心のエネルギー不足と考える
- 歩く・温まる・話を聞いてもらう
- ギャンブル・ドライブ・寝酒は逆効果になりやすい
- つらさが続くときは、窓口に相談する
まずは今日、帰り道に少しだけ遠回りして、歩いてみてください。その小さな一歩が、切り替えのきっかけになります。

